災害時の売り場ウォッチ——発災後、
防災用品の在庫と価格はどう動くか
大規模災害が起きると、防災用品の売り場では何が起きるのか。「品切れが起きます」と言葉で書くことは簡単ですが、実際にいつ・何が・どのくらいの速さで買えなくなるのかを記録した公開データは、ほとんどありません。
このページは、大規模災害の発生時に、主要な防災用品の在庫・価格・納期を定点観測して記録する場所です。運営者はEC業界で在庫・物流の実務を約18年経験しています(運営者情報)。売る側として災害対応を経験した視点で、売り場の変化を観測します。
なぜ記録するのか
当サイトの各記事には「大規模災害の発生後は注文が集中し、品切れや配送遅延が起きるケースがあります」という一文があります。2016年の熊本地震、2024年の能登半島地震では、実際に防災用品の品切れと配送遅延が発生しました。
ただ、その変化を発生直後から時系列で記録した公開データは見当たりません。発災から何時間で在庫が動き、いつ「売り切れ」表示に変わり、納期が何日に伸び、価格がどう動いたか——。この記録があれば、「防災用品は平時に買うものか、必要になってから買えるものか」という問いに、言葉ではなくデータで答えられるようになります。
運営者は東日本大震災のとき、東京でECの現場にいました。そのとき起きたのは、「商品が売り切れる」より手前の事態です。道路が止まり、鉄道が止まり、配送業者が止まり、そして注文を見る・受注を捌く・梱包するという業務そのものが止まりました。誰もが自分と周囲の安全、その日の食べ物の確保を優先していたからです。当然のことです。
当時よりはるかに機械化・自動化が進んだ今でも、ECは最後のところで人が動かしています。本当に大きな災害のとき、売る側の人間は画面の向こうの注文より、目の前にいる人の安全を優先します。「在庫がある」ことと「届く」ことは、別の問題——これが、売る側で災害を経験した人間の実感です。だから各記事に「平時のうちに」と書いています。
この経験があるぶん、需要が急増したとき在庫と物流がどう壊れるかには、ある程度の見当がついています。防災用品でそれがどう現れるかを、発災のたびにこのページで数字として確かめます。
観測の方法
当サイトで扱う5カテゴリの代表製品(防災セット・非常食・ポータブル電源・簡易トイレ・防災ラジオ)。各比較記事に掲載している製品の販売ページを対象にします。
販売ページの在庫表示(在庫あり/残りわずか/売り切れ/予約待ち)・販売価格・納期表示の3点。あわせて、ショップからの「出荷停止・受注停止」などの告知が出ていれば記録します(売り場は在庫より先に、人と物流から止まるため)。
発災後24時間以内・3日後・1週間後・1カ月後の4回。対象は震度6弱以上など、全国的に報道される規模の災害とします。
販売ページの表示をそのまま転記し、観測日時を明記します。推測や脚色は加えません。
観測は被災地域外からECサイトの表示を確認する形で行います。被災地の店頭の状況を代表するものではありません。
観測記録
令和8年8月千葉豪雨(2026年8月13日〜)
国土交通省による名称。8月13日夕方から千葉県内に雨雲が停滞し、大雨特別警報が発表された。観測はアフィリエイトリンクを踏まず、素のURL(amazon.co.jp/dp/ASIN・item.rakuten.co.jp/店舗/商品)で販売ページの表示を確認したもの。納期は届け先を2本立てで記録した——被災地域外は東京都目黒区下目黒(153-0064)、被災地域は千葉市緑区おゆみ野(266-0031)。千葉市緑区は、ヤマト運輸・佐川急便がいずれも集配停止地域として公表していた区域にあたる(各社8月14日発表時点)。同日、佐川急便は千葉市(若葉区・緑区)・市原市・八街市・山武市・大網白里市・東金市・山武郡(横芝光町・九十九里町)での集配停止と、全国から関東地方あて/関東地方から全国あての荷物の遅延を公表。日本郵便も千葉県で引受けまたは配達となる郵便物・ゆうパック等の遅延を公表していた。そのうえで、下表のとおり、両方の届け先で納期表示に差は出ていない。納期表示はAmazonプライム会員のアカウントで観測している。会員状態によって表示が変わるため、次回も同じ条件で観測する。1週間後の回は、8月20日の深夜(日付が変わった直後)に観測した。表中の「8月21日中にお届け」はその時点の表示にあたる。
このページは発災後24時間以内・3日後・1週間後・1カ月後の4回の観測を定めていますが、今回は24時間以内(8月14日)の1回を記録できませんでした。記録は2回目にあたる下記からの開始です。欠けた1回分を、後から推定や別の資料で埋めることはしません。また3日後(8月16日)の回は、Amazonで扱う12製品と楽天のラピタ公式ストアのみの観測です。楽天の他店舗(あかまる防災・尾西食品10食セット)とDefend Future公式ストアの3件はこの回では未取得のため、下表の3日後の行には含めていません。この3件は1週間後(8月20日)の回から取得しており、同じ回の16件はすべて記録しています。
(被災地域外)納期表示
(被災地域)
購入前の必須同意項目に「災害発生後はご注文が非常に殺到いたします。発送・お問い合わせのご返答にはお時間を頂戴いたします」の表示。令和8年熊本地震の観測時(8月3日)にも同じ表示があり、今回の豪雨後に追加されたものではない 未取得
出荷元・販売元がゆにでのこづち(8月8日〜16日休業・在庫品は通常発送の表示)に変更。前回は3,326円・アイリスオーヤマ公式ショップ 8月20日(木)お届け
出荷元・販売元は匠屋。前回の在庫表示は「残り7点」 8月18日〜19日お届け
出荷元・販売元 Jackery Japan。価格は前回と同額 8月18日(火)お届け
出荷元・販売元 dabbsson。「注文確定時に40%割引」の表示あり。前回の表示価格は89,000円 8月18日〜19日お届け
出荷元・販売元 LiTime Japan。前回は38,980円 8月18日(火)お届け
「最も早い配送 明日8月17日」の併記あり。価格は前回と同額 8月18日(火)お届け
「最も早い配送 明日8月17日」の併記あり。前回は6,783円 8月18日(火)お届け
前回は5,089円・在庫表示は「在庫あり」 8月18日(火)お届け
今回の観測から追加(前回は対象外) 8月18日(火)お届け
「最も早い配送 明日8月17日」の併記あり。価格は前回と同額 8月18日(火)お届け
「最も早い配送 明日8月17日」の併記あり。前回は3,219円 8月18日(火)お届け
出品はマーケットプレイス出品者(ISEJI-YA)。前回は15,500円・ITCharmストア 8月18日(火)お届け
(被災地域外)納期表示
(被災地域)
3日後の回では未取得だった1件。今回から記録を開始 未取得
在庫・価格・納期表示とも3日後の回から変化なし 未取得
3日後の回では未取得だった1件。今回から記録を開始 未取得
3日後の回では未取得だった1件。今回から記録を開始 未取得
3日後は3,300円・在庫表示は「通常2〜3日以内に発送します」 8月22日お届け
3日後は2,300円・在庫表示は「残り9点」。在庫表示は増えている 8月21日中にお届け
3日後と同額。観測直前の8月20日夜は149,800円の表示で、日付が変わる時点で戻った 8月22日お届け
3日後は169,800円。観測時点でタイムセール祭りの対象 8月22日〜23日お届け
3日後と同額 8月22日お届け
3日後は3,990円 8月21日中にお届け
3日後は7,980円 8月21日中にお届け
3日後は6,250円・在庫表示は「残り1点」。在庫表示は回復している 8月21日中にお届け
3日後と同額 8月21日中にお届け
3日後は11,900円 8月21日中にお届け
3日後は4,980円 8月21日中にお届け
3日後と同額・在庫表示も「残り1点」のまま 8月21日中にお届け
発災の翌日には、ECの現場では千葉県の一部地域あての配送停止と、関東全域での遅延が、現実の作業として始まっていました。配送事業者が集配を止めれば、売る側はその地域への出荷を止めるしかありません。順番としては、事業者の告知が先で、販売側の対応がそれに続きます。
一方で、上の表のとおり、商品ページの「お届け予定日」は被災地域を届け先にしても変わりませんでした。買う側が普段いちばん頼りにしている数字と、荷物が実際に動くかどうかは、同じものを見ていません。
上の表は販売ページの表示を転記したものです。実際にその日付どおりに届いたかどうかは、注文していないため確認していません。この観測方法で分かるのは「販売ページが何を表示していたか」までです。
令和8年熊本地震(2026年7月28日 16時27分・M7.1・最大震度7)
気象庁による名称。熊本県宇城市・八代郡氷川町で最大震度7を観測。当ページの観測対象基準(震度6弱以上)に該当する。観測はアフィリエイトリンクを踏まず、素のURL(amazon.co.jp/dp/ASIN・item.rakuten.co.jp/店舗/商品・公式ストア)で販売ページの表示を確認したもの。発災から6日(8月3日)の回は、Amazonの配送予定日を東京都内(153-0064)を届け先とした1本立てで記録した。1カ月後(8月28日)の回から届け先を2本立てにした——被災地域外は東京都目黒区下目黒(153-0064)、被災地域は熊本県宇城市松橋町(869-0502)。宇城市は最大震度7を観測した市にあたる。被災地域を届け先とした納期表示は1カ月後の回が初回で、6日後の回の「被災地域」欄が空欄なのはこのため。納期表示はAmazonプライム会員のアカウントで観測している。会員状態によって表示が変わるため、次回も同じ条件で観測する。1カ月後の回は、8月28日の深夜(日付が変わった直後の8月29日0時37分〜0時46分)に観測した。表中の「8月29日(土)中にお届け」はその時点の表示にあたる。この時刻の東京都内は当日配送の受付時間帯にあたっていた。観測時点のAmazonは「スマイルSALE」(9月3日23:59まで)の開催中だった。
このページは発災後24時間以内・3日後・1週間後・1カ月後の4回の観測を定めていますが、今回は発災時に観測体制がなく、24時間以内と3日後の2回を記録できませんでした。記録は3回目にあたる下記からの開始です。欠けた2回分を、後から推定や別の資料で埋めることはしません。
(被災地域外)納期表示
(被災地域)
購入前の必須同意項目に「災害発生後はご注文が非常に殺到いたします。発送・お問い合わせのご返答にはお時間を頂戴いたします」の表示。いつ掲出されたかは未確認 未取得
参考価格3,509円から5%引き。出荷元・販売元はアイリスオーヤマ公式ショップ 未取得
当店通常価格3,880円との併記 未取得
出荷元・販売元 Jackery Japan 未取得
出荷元・販売元 dabbsson 未取得
出荷元・販売元 LiTime Japan 未取得
参考価格18,840円との併記。出品はマーケットプレイス出品者(ITCharmストア) 未取得
(被災地域外)納期表示
(被災地域)
在庫・価格・納期表示とも6日後の回から変化なし 未取得
在庫・価格・納期表示とも6日後の回から変化なし。購入前の必須同意項目「災害発生後はご注文が非常に殺到いたします。発送・お問い合わせのご返答にはお時間を頂戴いたします」は今回も掲出 未取得
在庫・価格・出荷日とも6日後の回から変化なし。「8月30日スタート 防災週間SALE」の告知あり 未取得
6日後は3,326円・出荷元と販売元はアイリスオーヤマ公式ショップ。今回の販売元はSmile Spoon。被災地域を届け先としたときの表示価格は3,630円 8月30日(日)お届け
6日後は3,480円で、販売期間8月4日20:00〜8月11日01:59の表示と当店通常価格3,880円との併記があった。今回は販売期間の表示がない 未取得
価格は6日後と同額。在庫表示は「残り7点 ご注文はお早めに」から「在庫あり」に変わっている 8月30日(日)お届け
在庫・価格・納期表示とも6日後の回から変化なし 未取得
価格は6日後と同額。出荷元・販売元 Jackery Japan 8月30日(日)お届け
6日後は89,000円・在庫あり(出荷元・販売元 dabbsson)。今回は販売ページの価格表示が消え、他の出品者による128,388円・143,499円・158,389円の表示のみ。両方の届け先で同じ表示 表示なし
価格は6日後と同額。出荷元・販売元 LiTime Japan 8月31日(月)お届け
6日後は3,990円 8月30日(日)お届け
価格は6日後と同額 8月30日(日)お届け
6日後は5,089円・在庫表示は「在庫あり」。被災地域を届け先としたときは価格6,542円・在庫表示「残り7点 ご注文はお早めに」で、届け先によって別の出品が表示されている 9月2日(水)お届け
6日後は11,900円 8月30日(日)お届け
価格は6日後と同額 8月30日(日)お届け
6日後は15,500円・出品はマーケットプレイス出品者(ITCharmストア)。今回の販売元はK.E.Y. SHOPSで、出品者が変わっているため6日後と同じ条件の価格比較にはならない。被災地域を届け先としたときの在庫表示は「残り2点 ご注文はお早めに」 8月30日(日)お届け
発災からの1週間、運営者は本業のECの現場でこの状況を見ていました。危機意識そのものは、確かに高まっています。ただ、それが実際に買うという行動に移ったかというと、目に見えて増えたとまでは言えない——それがこの1週間の実感です。
配送については、東京から九州地方へ向かう荷物の遅延は実際に起きています。ただし全国の物流全体で見れば、影響は軽微な範囲にとどまっています。上の表で納期表示が平常どおりに見えるのは、この状況と矛盾しません。
上の表の納期は東京都内を届け先として確認したものです。九州方面への遅延は、この観測方法では捉えられていません。次回の観測では、被災地域を届け先とした納期表示もあわせて記録します。