防災の日は何をする?——
30分で終わる備えの見直し
9月1日が近づくと、そろそろ何かやったほうがいい気がしてくる。去年もそう思ったまま、結局リュックを開けないうちに9月が終わっていた——という年が続いていないでしょうか。
全部を一度にやる必要はありません。今日やることは、しまってあるものを出して、箱や本体の印字を読むところまでで構いません。実際、見直しが必要な品目の多くは、年数を暗記していなくても、書いてある文字を読めば判断できます。ただし印字を見ても分からないものが3つあり、そこだけは別の見方が必要になります。
本記事の数値は、官公庁・業界団体・メーカーが公表している情報をもとにしています。該当箇所に出典を併記しています。
今日やることは、3つだけ
防災グッズの見直しは、品目ごとにやることが違います。ただし整理すると3種類しかありません。この3つで分けておくと、何をどう確認すればいいかで迷わなくなります。
乾電池・非常食・水・簡易トイレの凝固剤・消火器・カセットボンベ。期限や製造年月が本体やパッケージに書いてあります。年数を覚える必要はありません。
モバイルバッテリーの膨らみ、消火器の腐食や変形、カセットボンベの錆。これらは期限内でも交換の対象になります。日付だけを見ていると取りこぼします。
ポータブル電源。年数ではなく、給電できるかどうかを確かめます。メーカーは3か月に1回を目安に残量を確認して充電するよう案内しています。
つまり見直しは、「年に1回」でひとくくりにできません。年1回で足りるものと、3か月ごとに触ったほうがいいものが混ざっています。どれがどれなのかは、SECTION 03の表にまとめました。
どこまでが今日の範囲か
防災の日にやろうとして手が止まるのは、どこで終わりにしていいか決まっていないからです。先に範囲を決めてしまうと動きやすくなります。以下は、防災リュックと家の備蓄をひととおり見る場合の目安です。
時間の半分近くを占めるのが手順2ですが、やっているのは箱をひっくり返して文字を読むことです。次の表にある9品目のうち6品目は、これで判断がつきます。ポータブル電源を持っていなければ、手順4を飛ばして25分ほどで終わります。
何を、どこで見れば分かるのか
「年に1回、防災の日に見直しましょう」という案内はよく見かけます。間違いではありませんが、それだけでは判断できません。品目によって、見るべき場所も、交換を決める基準も違うからです。
※横にスクロールできます。数値は各出典の公表時点のものです。
表を見るときの注意が3つあります
乾電池の使用推奨期限は、かつてJISで日本独自の性能基準として定められていました。12か月貯蔵したあとの最小平均持続時間を満たせる保存年数、という決め方です。ところが国際規格のIECには使用推奨期限に関する性能基準がなく、WTO/TBT協定への配慮から、2022年版のJISではこの記載が削除されました出典。
現在パッケージに書かれている期限は、各社が独自に定めた基準と試験方法にもとづく表示です。つまり「アルカリ乾電池は何年」と一律に言える根拠は、いまは存在しません。手元の電池が使えるかどうかは、本体の印字を読むのが確実です。
住宅用消火器は、腐食・キズ・変形が見られる場合、使用期限に達していなくても直ちに交換するよう案内されています。期限を過ぎた消火器には破裂による人身事故の危険があるためです出典。モバイルバッテリーの膨らみも同じで、購入時期とは関係なく進みます。日付だけを管理していると、この2つは取りこぼします。
備蓄用として売られている保存水の賞味期限は5年から10年です。一方、通常のミネラルウォーターは約2年程度とされています出典。特売のケースを買って押し入れに入れたままにしている場合、備蓄しているつもりでも期限が過ぎていることがあります。なお水道水を容器に汲んで置く場合は、塩素による消毒効果で3日程度が目安です。
膨らんでいたら、どうするか
見直しをしていて実際に手が止まりやすいのが、ここです。防災リュックのモバイルバッテリーや、押し入れから出てきた古いスマホ・携帯ゲーム機が、明らかに膨らんでいる。触っていいのか、このままにしていいのか、どこに持っていけばいいのかが分からない。順番に整理します。
膨らんだリチウムイオン電池の内部には、可燃性ガスがたまっています。この状態の電池に強い外力を加えると、可燃性ガスが噴き出して発火するおそれがあるとされています出典。膨らみは、電池の中で異常が進んでいることを外から見て分かる形にしたものだと考えると、扱い方の見当がつきます。
充電しないこと、そして強い力を加えないことです。押して膨らみを戻そうとする、穴を開けてガスを抜く、といった扱いは避けてください。NITEは、異常を見つけた場合はすぐに充電・使用を中止して、購入した販売店や製造・輸入事業者に相談するよう案内しています出典。
小型充電式電池の回収を行っているJBRCは、回収の対象を「破損、水濡れや膨張等の異常のある電池」ではないものと定めています出典。膨らんだ時点で、回収ボックスの対象外です。店頭に持ち込んでも受け付けてもらえないため、ここで行き先が分からなくなります。
上記のとおり、まず購入した販売店や製造・輸入事業者への相談が案内されています。あわせて、リチウム蓄電池については、環境省が2025年4月に市町村向けの通知を出しており、分別回収の区分として位置づけられています出典。背景には、廃棄物の処理施設や収集運搬車両でリチウム蓄電池を原因とする火災が相次いでいることがあります。回収の方法は自治体ごとに違うため、お住まいの自治体のサイトで確認してください。
NITEは、大量の水で消火し、可能な限り水没させた状態で119番通報するよう案内しています出典。電池に水をかけることをためらう方もいますが、この場合は水をかけて冷やし続けることが示されています。知っているかどうかで対応が変わる部分です。
古いスマートフォンや携帯ゲーム機のように電池が本体に内蔵されている製品は、電池だけを取り出せません。この場合も、自分で分解せず、販売店やメーカー、自治体の案内に従うのが安全です。
あるかどうかの次は、足りているかどうか
期限を確認し終えると、次に出てくるのが「そもそもこの量で足りるのか」という疑問です。目安としては、水が1人1日3リットル、最低3日分、できれば1週間分出典。トイレは1人1日5回で計画するとされています出典。
ただし必要量は家族の人数と想定日数で変わり、ペットがいればさらに増えます。手計算するより、数字を入れて出すほうが早く済みます。
足りないと分かってから注文したら、何日で届くのか
見直しの結果、足りないものが出てきます。平時であれば、多くは数日で届きます。問題はそこではなく、自分が被災した側になったときに何が起きるかです。当サイトでは災害が起きるたびに、防災用品の販売ページの表示を記録しています。2026年8月の千葉豪雨のときに分かったことがあります。
発災の翌日、配送事業者各社は千葉県内の一部地域で集荷・配達を停止し、関東地方あての荷物に遅延が出ていることを公表していました。
その状態で、集配が止まっている地域を届け先に設定して商品ページを見たところ、「お届け予定日」の表示は、被災していない地域とまったく同じでした。確認した12製品すべてで差がありませんでした。
その1週間後にも、同じ12製品を同じ2つの届け先で確認しました。このときも納期表示に差はなく、被災地域を届け先にしても「当日中」または「翌日」と表示されていました。
買う側がいちばん頼りにしている数字と、荷物が実際に動くかどうかは、同じものを見ていません。なお、この記録で分かるのは販売ページが何を表示していたかまでで、実際にその日付どおり届いたかどうかは注文していないため確認していません。
同じ観測は、2026年7月の熊本地震のときにも行っています。このときは発災から6日後の時点で、品切れも価格の高騰も、納期の大幅な遅延も見られませんでした。「災害が起きたら即座に品切れになる」わけでも、「災害が起きても普通に届く」わけでもありません。どちらになるかは、自分がどちら側にいるかで変わります。
よくある質問
防災グッズは、どのくらいの頻度で見直せばいいですか?
品目によって違います。乾電池・非常食・水のように印字を読めば分かるものは、年に1回まとめて確認すれば足ります。一方でポータブル電源は、メーカーが3か月に1回を目安に残量を確認して充電することをすすめています。モバイルバッテリーの膨らみや消火器の腐食は、期限とは無関係に進むため、見つけたときが交換のときです。「年2回」「年4回」と回数で決めるより、品目ごとに管理の仕方が違うと考えるほうが実態に合います。
賞味期限が切れた非常食は食べられますか?
メーカーはすすめていません。尾西食品は自社のアルファ米について、賞味期限が過ぎても急激に劣化はしないものの、風味等が変化している場合があるため喫食はすすめない、としています。また賞味期限は袋や容器を開けずに保存していた場合の目安であり、一度開けたものは期限に関係なく早めに食べるよう案内されています。備蓄として当てにするなら、期限内に食べて買い足すほうが確実です。
膨らんだモバイルバッテリーは、どこに捨てればいいですか?
家電量販店などにある小型充電式電池の回収ボックスには出せません。回収を行っているJBRCは、破損・水濡れ・膨張などの異常がある電池を回収対象外としているためです。NITEは、異常を見つけた場合は充電・使用を中止して、購入した販売店や製造・輸入事業者に相談するよう案内しています。あわせて、リチウム蓄電池は2025年度から自治体の分別回収区分として位置づけられているため、お住まいの自治体のサイトで回収方法を確認してください。回収の方法は自治体ごとに異なります。
備蓄する水は、普通のペットボトルでもいいですか?
使えますが、期限は思っているより早く来ます。農林水産省の資料では、備蓄用として売られている保存水の賞味期限は5年から10年、通常のミネラルウォーターは約2年程度とされています。4倍から5倍の差があるため、ケースで買った普通の水を置いたままにしていると、気づかないうちに期限が過ぎていることがあります。日常的に飲んで買い足すローリングストックにするなら、通常の水でも問題なく成立します。
全部やる時間がありません。1つだけやるなら何ですか?
モバイルバッテリーやポータブル電源が膨らんでいないかを見ることです。理由は、放置したときに危険が増えるのがこの1点だけだからです。非常食や水の期限が切れていても、明日すぐ困るわけではありません。膨らんだリチウムイオン電池は内部に可燃性ガスがたまっており、強い力が加わると発火するおそれがあるとNITEが注意を呼びかけています。残り8品目は来年でも間に合います。
実際に製品を使って検証していますか?
いいえ。官公庁・業界団体・メーカーが公表している情報と、各販売サイトの表示をもとに整理しています。本文中の数値には出典を併記しているので、判断の前に元の資料を確認していただけます。
まとめ
防災の日の見直しは、年数を暗記する作業ではありません。しまってあるものを出して、印字を読む。印字では分からないものは見た目を見る。それでも分からないポータブル電源だけは、実際に動かす。この3つに分けてしまえば、30分ほどで一巡します。
全部が今日終わらなくても構いません。期限の切れた非常食や水は、来年の見直しまで持ち越しても明日すぐに困るものではありません。ただし膨らんでいる電池だけは、今日のうちに充電をやめて分けておくことをおすすめします。放置している間に危険が増えるのは、9品目のうちこれだけだからです。
足りないものが見つかった場合、平時なら数日で届きます。ただし自分が被災した側になったとき、販売ページのお届け予定日は実際の配送状況を反映していないことがあります。確認しておくなら、何も起きていない今日が向いています。
参考資料
- 一般社団法人 電池工業会「電池の規格について」
- 製品評価技術基盤機構(NITE)「製品安全情報マガジン Vol.481」
- 一般社団法人JBRC「廃棄方法(回収対象/対象外説明)」
- 環境省「自治体向け(リチウム蓄電池関係):適正処理に関する方針と対策集」
- 一般社団法人 日本消火器工業会「消火器の使用期限」
- 岩谷産業「カセットボンベの使用期限と処理方法」
- 尾西食品「よくあるご質問」
- 農林水産省「災害時に備えた食品ストックガイド」
- 内閣府「避難所におけるトイレの確保・管理ガイドライン」
- パナソニック「備えの基本 乾電池」
- Jackery「動作・保管温度|ポータブル電源」
外部サイトは別タブで開きます。出典の内容は各機関の発表時点のものです。
※各品目の期限・保管条件は、製品やメーカーによって異なります。本記事の数値は各出典が公表している目安であり、実際の判断はお手元の製品の表示と取扱説明書に従ってください。膨らんだ電池の回収方法は自治体ごとに異なります。